人は、なぜ行動するのでしょうか。
もっと成長したいから。
幸せになりたいから。
誰かに認められたいから。
お金を稼ぎたいから。
嫌な現実から抜け出したいから。
さまざまな理由があるように見えますが、人間の行動を深く見ていくと、かなり根本的な原理にたどり着きます。
それが、
Pain:痛みを避ける
Pleasure:快楽を得る
という原理です。
人は基本的に、痛みを避け、快楽を得ようとして行動します。
人の行動の根本原理はすべてこの2軸で説明できます。
ここでいう痛みとは、身体的な痛みだけではありません。不安、恐怖、恥、孤独、劣等感、退屈、罪悪感、焦り、無価値感など、心理的な苦しさも含まれます。
一方で快楽とは、単なる娯楽や気持ちよさだけではありません。安心感、達成感、承認、つながり、成長実感、自由、自己実現、誇りなども含まれます。
つまり、PainとPleasureは、人間の行動を理解するうえで非常に重要な原理原則なのです。
人の行動の根本原理 PainとPleasure

Painとは、直訳すると「痛み」です。
人間にとって不快で、できれば避けたいものを指します。たとえば、怒られる、失敗する、恥をかく、嫌われる、損をする、孤独になる、将来に不安を感じるといったことです。
Pleasureとは、直訳すると「快楽」です。
人間にとって心地よく、できれば得たいものを指します。たとえば、褒められる、認められる、安心する、自由になる、成功する、愛される、成長を感じるといったことです。
人は、このPainを避け、Pleasureを得るために、「無意識」のうちに多くの行動を選んでいます。
たとえば、仕事を頑張る理由も人によって異なります。
ある人は「成果を出して認められたい」というPleasureに向かって頑張ります。
別の人は「怒られたくない」「評価を下げたくない」というPainを避けるために頑張ります。
表面的には同じ「仕事を頑張る」という行動でも、その奥にある動機はまったく違うことがあります。
人間は痛みを避ける力の方が強い

PainとPleasureの原理で特に重要なのは、一般的に人間は「快楽を得ること」よりも「痛みを避けること」に強く反応しやすいという点です。
たとえば、
「挑戦すれば成功するかもしれない」
と思っていても、
「でも失敗したら恥ずかしい」
「否定されたら傷つく」
「周りにどう思われるかわからない」
という痛みの方が強く感じられると、人は行動を止めます。
本当は転職したい。
本当は副業を始めたい。
本当は自分の意見を言いたい。
本当は好きなことに挑戦したい。
そう思っていても、失敗、否定、孤立、損失、恥といったPainが強いと、人は現状維持を選びます。
つまり、人が動けないとき、必ずしもやる気がないわけではありません。
PleasureよりもPainの方が強くなっているだけなのです。
現状維持もPainを避ける行動である

「変わりたいのに変われない」という悩みは、多くの人が抱えています。
今の仕事に違和感がある。
人間関係が苦しい。
このままではいけない気がする。
もっと自分らしく生きたい。
そう思っているのに、なぜか動けない。
その理由の一つは、変化そのものにPainがあるからです。
転職活動をすれば、自分の市場価値と向き合うことになります。
副業を始めれば、成果が出ない自分を見ることになります。
人間関係を変えようとすれば、相手に嫌われる可能性があります。
本音を言おうとすれば、拒絶される怖さがあります。
一方で、今のままでいることにも不満はありますが、少なくとも慣れた痛みです。
人は、未知の痛みよりも、慣れた痛みを選びやすいものです。
だから、現状維持は怠けではありません。
現状維持もまた、Painを避けるための防衛反応なのです。
快楽にも短期的な快楽と長期的な快楽がある

Pleasureには、短期的な快楽と長期的な快楽があります。
短期的な快楽とは、すぐに気持ちよくなれるものです。
スマホを見る。
お酒を飲む。
甘いものを食べる。
動画をだらだら見る。
嫌なことを先延ばしにする。
その場を取り繕って安心する。
これらは一時的に不安や退屈を消してくれます。つまり、短期的なPleasureを与えてくれます。
しかし、長期的に見るとどうでしょうか。
やるべきことが溜まる。
健康を損なう。
自己嫌悪が強くなる。
自信を失う。
本当に望む人生から遠ざかる。
このように、短期的なPleasureが、長期的なPainにつながることもあります。
一方で、長期的なPleasureとは、すぐには快適ではないけれど、未来の自分に大きな充実感をもたらすものです。
運動する。
勉強する。
転職活動をする。
本音を伝える。
苦手なことに挑戦する。
自分と向き合う。
地道に発信を続ける。
これらは最初、面倒だったり、不安だったり、怖かったりします。つまり、短期的にはPainを伴います。
しかし、続けることで、成長、自信、自由、誇り、自己実現といった長期的なPleasureにつながります。
人生が変わる人は、短期的なPainを引き受けて、長期的なPleasureを選べる人とも言えます。
人が行動できない理由

人が行動できない理由は、能力不足だけではありません。
多くの場合、その行動に対して、無意識にPainを紐づけていることが原因です。
たとえば、発信できない人は、発信そのものが嫌いなのではなく、
「批判されたらどうしよう」
「誰にも反応されなかったら恥ずかしい」
「こんなことを書いていいのかな」
「自分なんかが言っていいのかな」
というPainを感じているのかもしれません。
転職活動ができない人は、転職したくないのではなく、
「書類で落ちたら傷つく」
「面接で否定されたら怖い」
「自分に価値がないとわかったらつらい」
「今より悪くなったらどうしよう」
というPainを避けているのかもしれません。
営業できない人も同じです。
商品に自信がないというより、
「断られるのが怖い」
「押し売りだと思われたくない」
「嫌われたくない」
「お金の話をするのが怖い」
というPainを避けていることがあります。
つまり、人が動けないときは、
「どうすれば行動できるか?」
だけでなく、
「その行動にどんな痛みを感じているのか?」
を見ていくことが大切です。
PainとPleasureは人によって違う

同じ出来事でも、人によってPainになることもあれば、Pleasureになることもあります。
たとえば、人前で話すこと。
ある人にとっては、注目される快感や表現する喜びがあります。
しかし別の人にとっては、失敗する恐怖や恥をかく痛みがあります。
営業も同じです。
ある人にとっては、人とつながり、価値を届ける楽しい行為です。
しかし別の人にとっては、拒絶される怖さや、相手に迷惑をかける罪悪感を伴う行為です。
つまり、何に痛みを感じ、何に快楽を感じるかは、その人の過去の経験、価値観、思い込み、自己イメージによって変わります。
過去に怒られた経験が多い人は、「間違えること」に強いPainを感じやすくなります。
親の顔色を見て育った人は、「人に嫌われること」に強いPainを感じやすくなります。
成果を出したときだけ認められてきた人は、「役に立たない自分」に強いPainを感じやすくなります。
このように、PainとPleasureの反応は、その人の人生経験と深く結びついています。
思い込みがPainとPleasureをつくる

PainとPleasureは、出来事そのものによって決まるわけではありません。
その出来事をどう意味づけているかによって変わります。
たとえば、「失敗する」という出来事があったとします。
ある人は、
「失敗した。自分はダメだ」
と捉えます。
この場合、失敗は強いPainになります。
一方で、別の人は、
「失敗した。改善点がわかった」
と捉えます。
この場合、失敗は学びになります。
同じ失敗でも、意味づけが違えば、感じる痛みの大きさは変わります。
つまり、人は出来事そのものに反応しているようで、実際には「その出来事に与えた意味」に反応しています。
だからこそ、人生を変えたいときは、行動だけを変えるのではなく、自分が何にPainを感じ、何にPleasureを感じているのか、その意味づけを見直すことが重要です。
行動を変えるには、痛みと快楽の紐づけを変える

人の行動を変えるには、PainとPleasureの紐づけを変えることが有効です。
たとえば、運動を習慣にしたいとします。
運動に対して、
「面倒くさい」
「疲れる」
「時間が取られる」
というPainばかりを感じていると、続きません。
しかし、
「運動すると気分が整う」
「自分との約束を守れて自信になる」
「健康になり、将来の不安が減る」
「体が軽くなって仕事の集中力も上がる」
とPleasureを結びつけると、行動しやすくなります。
逆に、先延ばしをやめたい場合は、先延ばしに対するPainを明確にすることも有効です。
「今は楽だけど、後で自己嫌悪になる」
「チャンスを逃す」
「自信が下がる」
「ずっと同じ悩みを繰り返す」
このように、短期的には楽に見える行動が、長期的にどんな痛みを生んでいるのかを直視することで、行動を変える力が生まれます。
人は、十分なPainを感じるか、十分なPleasureを感じたときに動きます。
キャリアにおけるPainとPleasure

キャリアの悩みにも、PainとPleasureは深く関わっています。
たとえば、今の仕事に不満があるのに辞められない人がいます。
その人の中には、今の仕事を続けるPainがあります。
やりがいがない。
成長実感がない。
毎日がつまらない。
このままでいいのか不安。
自分らしく働けていない。
一方で、仕事を変えるPainもあります。
転職活動が怖い。
年収が下がるかもしれない。
失敗したらどうしよう。
新しい環境でやっていけるかわからない。
家族や周囲にどう思われるか不安。
このとき、今の仕事を続けるPainよりも、変化するPainの方が強いと、人は現状に留まります。
逆に、今のままでいるPainが限界を超えたり、未来のPleasureが明確になったりすると、人は動き始めます。
たとえば、
「このまま10年続けたら本当に後悔する」
「自分の強みを活かせる仕事があるかもしれない」
「もっと納得感のある人生を生きたい」
「今動けば、未来の選択肢が広がる」
と思えたとき、行動する力が生まれます。
キャリアにいては、あなたが何を避けたくて、何を得たいのかを丁寧に見ていくことが大切です。
人間関係におけるPainとPleasure

人間関係の悩みにも、PainとPleasureは大きく関係しています。
たとえば、本音を言えない人がいます。
なぜ言えないのでしょうか。
多くの場合、本音を言うことにPainを感じているからです。
嫌われるかもしれない。
否定されるかもしれない。
空気を悪くするかもしれない。
わがままだと思われるかもしれない。
相手を傷つけるかもしれない。
そのPainを避けるために、自分の気持ちを抑えます。
一時的には、波風が立たず安心できます。これは短期的なPleasureです。
しかし、長期的には、
自分がわからなくなる。
相手に合わせすぎて疲れる。
不満が溜まる。
関係が表面的になる。
本当の意味でわかり合えない。
というPainが生まれます。
つまり、本音を言わないことは、一時的には安全でも、長期的には自分を苦しめることがあります。
もちろん、何でも思ったままに言えばいいわけではありません。
大切なのは、自分の本音を乱暴にぶつけることではなく、誠実に伝えることです。
自己理解としてのPainとPleasure

PainとPleasureは、自己理解にも役立ちます。
自分を知るためには、次の問いが有効です。
自分は何を避けようとしているのか。
何を失うことを怖れているのか。
何を得たいと思っているのか。
どんなときに安心するのか。
どんなときに傷つくのか。
何をすると自分らしさを感じるのか。
これらを見ていくと、自分の行動パターンが見えてきます。
たとえば、いつも頑張りすぎる人は、「認められないPain」を避けているのかもしれません。
人に合わせすぎる人は、「嫌われるPain」を避けているのかもしれません。
挑戦できない人は、「失敗して自信を失うPain」を避けているのかもしれません。
逆に、何にPleasureを感じるかを見ると、自分の価値観も見えてきます。
人の役に立ったときに嬉しい。
深く考えて言語化できたときに喜びを感じる。
自由に創造しているときに生き生きする。
誰かと本音でつながれたときに満たされる。
成長を感じたときに誇らしい。
こうしたPleasureの中に、自分らしい生き方のヒントがあります。
PainとPleasureに振り回されないために

PainとPleasureは、人間にとって自然な反応です。
痛みを避けたいと思うことも、快楽を求めることも悪いことではありません。
ただし、無意識のまま反応していると、短期的な痛みを避けるために、長期的な幸せを失うことがあります。
たとえば、
怒られたくないから挑戦しない。
恥をかきたくないから発信しない。
嫌われたくないから本音を言わない。
失敗したくないから行動しない。
不安を見たくないから先延ばしにする。
これらはすべて、短期的なPainを避ける行動です。
しかし、その結果として、自信、成長、自由、自己実現といった長期的なPleasureから遠ざかってしまうことがあります。
大切なのは、Painを完全になくすことではありません。
むしろ、人生において本当に大切なことには、ある程度のPainが伴います。
挑戦には不安がある。
成長には負荷がある。
本音には怖さがある。
変化には不確実性がある。
自分と向き合うことには痛みがある。
そのPainを避け続けるのではなく、何のためにその痛みを引き受けるのかを明確にすることが大切です。
まとめ

PainとPleasureとは、人間の行動を動かす根本的な原理です。
人は、痛みを避け、快楽を得ようとして行動します。
痛みとは、身体的な痛みだけでなく、不安、恐怖、恥、孤独、劣等感、罪悪感などの心理的な苦しさも含みます。
快楽とは、単なる楽しさだけでなく、安心、承認、達成感、成長、自由、自己実現なども含みます。
人が動けないとき、そこには多くの場合、何らかのPainがあります。
そして、人が本当に動き出すとき、そこには強いPainから抜け出したい気持ちか、強いPleasureを得たい気持ちがあります。
大切なのは、自分が何を怖れていて、何を望んでいるのかを知ることです。
短期的なPainを避けるために、長期的なPleasureを失っていないか。
短期的なPleasureに流されて、長期的なPainを増やしていないか。
本当に得たい未来のために、今どんな痛みを引き受ける必要があるのか。
PainとPleasureを理解すると、自分の行動パターンが見えてきます。
そして、自分を責めるのではなく、より意識的に行動を選べるようになります。
人は、痛みと快楽に支配される存在でもあります。
しかし同時に、その仕組みを理解することで、自分の人生を選び直すこともできるのです。

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