認知の歪みとは?代表的な10種類と具体例、自分の思考の癖に気づく方法

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やりたいことがわからない、、
どこに向かって生きていけばいいのかわからない、、
いつも人間関係がうまいくいかない、、

そんな悩みを抱えていませんか?

それはあなたの能力が足りないのでもなく、やり方が間違っているからでもなく、認知の歪みが影響しているかもれません。

仕事で一度ミスをしただけなのに、自分は仕事ができない人間だと思ってしまう。
誰かに褒められても、たまたまうまくいっただけだと考える。
新しいことに挑戦したい気持ちはあるのに、失敗する未来ばかりが頭に浮かんで、なかなか行動できない。

認知の歪みとは、物事を極端に捉えたり、一部の情報だけから結論を出したりする、偏った思考パターンのことです。

認知の歪みは、特別な人だけに起こるものではありません。誰でも、状況によって物事を偏って捉えてしまうことがあります。

そして、自分の考え方の癖には、意外と気づきにくいものです。

私はこれまでキャリアコーチとして350時間を超えるセッションを重ねてきました。その中で、自分を苦しめている思考の癖に気づくことが、現状を変えるきっかけになる場面を数多く見てきました。

この記事では、認知の歪みの代表的な10種類を、仕事や人間関係、キャリアの具体例とともに紹介します。

さらに、自分の認知の歪みに気づく方法や、より柔軟な考え方を身につけるためのステップについても解説します。

ぜひ、自分にも当てはまるものがないか、考えながら読んでみてください。

目次

1. 認知の歪みとは?物事を偏って捉える思考の癖

認知の歪みという概念は、アメリカの精神科医アーロン・ベックが発展させた認知療法の中で研究され、その後、精神科医デビッド・バーンズが著書『いやな気分よ、さようなら』などを通じて、代表的な10種類のパターンを広く紹介しました。

最近では日本でも、心理学領域だけでなく、ビジネス界や広く人間関係において認識が広まってきています。

端的に説明すると、
「認知の歪みとは、物事を極端に捉えたり、一部の情報だけで判断したりすることで、現実を偏って解釈してしまう思考パターンのこと」となります。

と言われてもいまいちピンとこないと方もいると思いますので、以下もう少し噛み砕きながら説明をします。

認知のとは?

まず理解しておきたいのが「認知」という言葉です。

心理学における「認知」とは、私たちが外部から得た情報を受け取り、理解し、解釈したり判断したりする心の働きを指します。

人は必ずしも事実をそのまま客観的に受け取れているわけではありません。必ず何かしらの認知(解釈)をした上で行動したり、心や体に影響がでます。

例えば、雨が降っているという事実があった時、

外出しようとしていた人は「雨=めんどくさい」と解釈するかもしれません。すると気分が沈んだり、行動もでにくくなるかもしれません。

逆に雨を待ち望んでいた農家の方は「雨=ありがたい」と認知し気分は上がり、行動的になるかもしれません。

このように私たちは日頃から事実にいろんな意味をつけて受け取っていて、それが行動や気分に紐づいています。

これが認知です。

認知の歪みとは?

それでは認知の歪みの「歪み」とはなんでしょうか。

「認知の歪みとは、物事を極端に捉えたり、一部の情報だけで判断したりすることで、現実を偏って解釈してしまう思考パターンのこと」です。

認知が現実に起こっていることを歪めている。現実を正しく受け止められない、と言い換えることもできるかもしれません。

例えば、一度の失敗をもとに「自分は何をやってもダメだ」と考えたり、相手の反応が少し冷たかっただけで「嫌われているに違いない」と決めつけたりすることがあります。

でも、一度失敗しただけで自分がダメと当てはめるのは極端ですし、相手の反応の原因が自分かどうかはわかりません。客観的に考えればそうでない可能性もあるのに、視野が狭まって偏った解釈で現実を理解してしまうのです。

こうした考え方には、一度の出来事をすべてに当てはめたり、十分な根拠がないまま結論を出したりする、認知の偏りから起きています。

そしてこういった認知の偏りは本人では気づきにくいのも特徴です。認知の歪みに気づくには、自分の思考の枠から外れる必要があるからです。これには一定のトレーニングが必要になります。

認知の歪みは誰にでもある

ただし、認知の歪みがあるからといって、性格に問題があるわけでも、心の病気であるわけでもありません。

私たちは、いつも十分な情報を持って判断できるわけではありません。誰にでも物事を偏って解釈してしまうことはあります。

また、過去の経験やそのときの感情、心身の状態によっても、出来事の受け取り方は変わります。例えば、疲れているときには、普段なら気にならない相手の言葉を悪く受け取ってしまうこともあるでしょう。

誰にでも思考の偏りが生じる可能性があります。

大切なのは、認知の歪みをなくすことではなく、自分の考え方が偏っている可能性に気づけるようになること。

自分が考えていることが、必ずしも事実とは限らないと知ることです。


2. 代表的な認知の歪み10種類と具体例

代表的な認知の歪み10種類 一覧

認知の歪みには、いくつかの代表的なパターンがあります。

ここでは、精神科医デビッド・バーンズが整理した代表的な10種類を紹介します。

認知の歪み特徴具体例
① 全か無か思考(白黒思考)物事を成功か失敗かの二択で考える「完璧にできなければ意味がない」
② 過度の一般化一度の出来事をすべてに当てはめる「一度失敗したから、次も失敗する」
③ 心のフィルター悪い部分だけに注目する「9人に褒められても、1人の批判が気になる」
④ マイナス化思考良い出来事や成果を否定する「成功したのは、たまたま運が良かっただけ」
⑤ 結論の飛躍根拠が乏しいのに悪い結論を出す「返信がないから、嫌われているに違いない」
⑥ 拡大解釈と過小評価失敗を大きく、成功を小さく捉える「小さなミスは大問題。成果は大したことない」
⑦ 感情的決めつけ自分の感情を事実だと考える「不安だから、きっとうまくいかない」
⑧ すべき思考「こうあるべき」というルールに縛られる「社会人なら、つらくても我慢すべきだ」
⑨ レッテル貼り一部の行動で人間全体を決めつける「ミスをする自分はダメ人間だ」
⑩ 個人化(自己関連付け)自分に責任のないことまで自分のせいにする「相手が不機嫌なのは自分のせいだ」

いかがでしょうか。

自分にも当てはまると感じるものはありましたか?

一つだけでなく、複数の認知の歪みが当てはまることもあります。また、状況によって現れる思考パターンが変わることもあります。

大切なのは、どの認知の歪みがあるかを判定することではなく、自分が普段、どのような考え方をしているのかに気づくことです。

それでは、それぞれの認知の歪みについて、具体例を交えながら詳しく見ていきましょう。

① 全か無か思考(白黒思考)|完璧でなければ失敗だと考える

全か無か思考とは、物事を「成功か失敗か」「良いか悪いか」「100点か0点か」のように、極端な二択で判断する考え方です。

例えば、

  • 仕事で一つでもミスをしたら、すべて失敗だと思う
  • 計画どおりに勉強できなかったら、意味がないと感じる
  • 自分にできないことが一つあると、能力がないと考える

といったものです。

このような考え方が強いと、少しの失敗でも自分を厳しく評価するようになります。

また、完璧にできないことが怖くなり、そもそも挑戦することを避けてしまう場合もあります。

例えば、新しい仕事に興味があっても、「すべての条件を満たしていないから応募できない」と考えてしまう。

しかし、実際には、すべての条件を満たしていなくても採用される可能性はあります。

仕事の成果も、成功か失敗かの二択では測れません。

「100点ではないけれど、70点はできている」「失敗した部分もあるけれど、うまくいった部分もある」

このように、物事を段階的に捉えることで、より現実に近い評価ができるようになります。

② 過度の一般化|一度の失敗をすべてに当てはめる

過度の一般化とは、一度や数回の出来事をもとに、それがいつも起こるかのように考えてしまうことです。

例えば、

  • 一度プレゼンで失敗して「自分は人前で話すのが苦手だ」と決めつける
  • 転職活動で不採用になり「自分はどこからも必要とされない」と考える
  • 一人から断られて「誰も自分を受け入れてくれない」と思う

といったものです。

たった一度の出来事が、自分の能力や価値を決める証拠になってしまいます。

この考え方の問題は、過去の経験によって未来の可能性まで決めつけてしまうことです。

例えば、転職活動で不採用になったとしても、その理由はさまざまです。経験やスキルが募集条件と合わなかったのかもしれませんし、ほかの候補者との比較によるものかもしれません。

一社から不採用になったことは、ほかの企業からも不採用になることを意味しません。

「今回うまくいかなかったこと」と「これからもうまくいかないこと」は別です。

過去の経験を、そのまま未来の可能性に当てはめていないか、考えてみましょう。

③ 心のフィルター|悪いところばかりに目が向く

心のフィルターとは、物事の否定的な部分だけに注目し、肯定的な部分を見落としてしまう考え方です。

例えば、仕事のプレゼンで9人から褒められ、1人から改善点を指摘されたとします。このとき、9人から褒められたことよりも、1人からの指摘ばかりが気になってしまう。そして、「今回のプレゼンはうまくいかなかった」と考えてしまう。

これが心のフィルターの一例です。

もちろん、改善点を振り返ることは大切です。しかし、否定的な情報だけに注目していると、自分ができたことや周囲から評価されていることが見えなくなってしまいます。

その結果、実際には成果を出しているにもかかわらず、自分に自信を持てなくなることがあります。

大切なのは、悪いところを無理に見ないようにすることではありません。

「改善すべき点もあったけれど、評価された点もあった」と、両方を捉えることです。

④ マイナス化思考|成功や長所を認められない

マイナス化思考とは、良い出来事や自分の長所があっても、それを価値のないものとして扱ってしまう考え方です。

例えば、

  • 仕事で成果を出しても「たまたま運が良かっただけ」と考える
  • 人から褒められても「お世辞に違いない」と思う
  • 目標を達成しても「このくらい誰でもできる」と考える

といったものです。

先ほどの心のフィルターが「悪い部分に注目すること」だとすれば、マイナス化思考は「良い部分があっても、それを認めないこと」です。

例えば、上司から「資料がわかりやすかった」と褒められたとします。

それに対して、「今回は内容が簡単だったから」「ほかの人ならもっと上手にできたはず」と考えてしまう。これでは、どれだけ良い結果を出しても、自分への肯定的な評価につながりません。

もちろん、成功に運や周囲のサポートが関係していることもあるでしょう。ただ、それと同時に、自分の努力や能力が成果に貢献している可能性もあります。

自分の成果を過大評価する必要はありませんが、過小評価する必要もありません。

良い結果が出たときには、「自分が貢献したことは何だろう?」と考えてみてください。

⑤ 結論の飛躍|根拠がないのに悪い結論を出す

結論の飛躍とは、十分な根拠がないにもかかわらず、否定的な結論を出してしまうことです。

代表的なものに、「心の読みすぎ」と「先読みの誤り」があります。

心の読みすぎ

相手が実際に何を考えているかわからないのに、悪い方向に推測してしまうことです。

例えば、

  • メッセージの返信が遅いので「嫌われた」と考える
  • 会議で上司が無表情だったので「自分の発言に呆れている」と思う
  • 同僚から挨拶が返ってこず「避けられている」と判断する

といったものです。

しかし、相手は忙しかっただけかもしれませんし、別のことを考えていた可能性もあります。

先読みの誤り

まだ起きていない未来を、悪い方向に決めつけることです。

例えば、

「どうせ面接では落とされる」
「新しいことを始めても、きっと失敗する」

といった考え方です。

このような予測が強くなると、挑戦する前から諦めてしまうことがあります。

もちろん、不安な予測が現実になることもあります。

しかし、「そうなるかもしれない」と「必ずそうなる」は違います。

まだわからないことを、すでに決まった事実のように捉えていないか、意識してみましょう。

⑥ 拡大解釈と過小評価|失敗を大きく、成功を小さく捉える

拡大解釈と過小評価とは、物事の重要性を実際以上に大きく捉えたり、反対に小さく捉えたりすることです。

特に、自分の失敗や欠点を大きく評価し、成功や長所を小さく評価する形で現れることがあります。

例えば、

  • 会議で一度言葉に詰まっただけで「大失敗した」と感じる
  • 自分の短所を、人生を左右する重大な欠点だと考える
  • 難しい仕事をやり遂げても「大したことではない」と思う

といったものです。

例えば、30分間のプレゼンで、一度だけ説明に詰まったとします。そのほかはスムーズに説明でき、相手からの質問にも答えられました。それなのに、説明に詰まった場面ばかり思い出し、「自分はプレゼンが下手だ」と考えてしまう。

こうした評価を続けていると、いくら経験を積んでも、自信を育てにくくなります。

もし思い当たることがあれば、第三者の視点で考えてみてください。「同じことが友人に起きたら、自分はどう評価するだろう?」そう問いかけることで、自分にだけ厳しい評価をしていることに気づけるかもしれません。

⑦ 感情的決めつけ|そう感じるから事実だと思う

感情的決めつけとは、自分の感情を、そのまま事実を証明するものとして扱ってしまうことです。

例えば、

  • 不安だから、きっとうまくいかない
  • 罪悪感があるから、自分が悪いに違いない
  • 自信がないから、自分には能力がない
  • 相手に怒りを感じるから、相手が間違っている

といったものです。

ここで注意したいのは、感情そのものが間違っているわけではないということです。

不安も怒りも悲しみも、自分にとって大切な情報を含んでいます。

ただし、感情が教えてくれることと、実際に起きていることは、必ずしも一致しません。

例えば、新しい仕事に挑戦することを考え、不安を感じたとします。その不安は、失敗への恐れや未知の環境に対する警戒を示しているのかもしれません。しかし、不安を感じているからといって、その仕事で失敗することが決まったわけではありません。

「不安を感じている」ということは事実でも、「だから失敗する」という結論は解釈です。

感情を大切にしながら、そこから導いた結論が妥当なのかを考えてみましょう。

⑧ すべき思考|「こうあるべき」に縛られる

すべき思考とは、「〜すべき」「〜しなければならない」という強いルールによって、自分や他人を評価する考え方です。

例えば、

  • 社会人なら、つらくても我慢すべき
  • 一度入社した会社には、最低3年いるべき
  • 親の期待には応えるべき
  • 仕事では、常に成果を出さなければならない
  • 人に迷惑をかけてはいけない

といったものです。

もちろん、社会生活には守るべきルールや責任があります。

問題は、柔軟に考えられるはずのことまで、絶対に守らなければならないルールにしてしまうことです。

例えば、今の仕事に強い不満を抱いていても、「一度入社した会社は、簡単に辞めるべきではない」と考えてしまう。本当は転職する選択肢もあるのに、自分でその可能性を閉ざしてしまうことがあります。

また、自分だけでなく、他人にも「こうあるべき」を強く求めることで、人間関係が苦しくなる場合もあります。

そんなときは、一度考えてみてください。

「それは本当に守らなければならないルールだろうか?」
「誰が決めたルールなのだろう?」
「自分は本当はどうしたいのだろう?」

社会や他人の基準を、いつの間にか自分の絶対的なルールにしていないか。

そのことに気づくだけでも、選択肢は広がるかもしれません。

⑨ レッテル貼り|一部の行動で人間全体を決めつける

レッテル貼りとは、一度の失敗や一部の特徴をもとに、自分や他人の人格全体を決めつけてしまうことです。

例えば、

  • 仕事でミスをした自分は「ダメ人間だ」
  • 人前で緊張する自分は「コミュニケーション能力がない」
  • 約束に遅れた相手は「だらしない人間だ」

といったものです。

ここで重要なのは、「行動」と「人間そのもの」を区別することです。

仕事でミスをしたことは事実かもしれません。しかし、それだけで自分がダメな人間だと決まるわけではありません。

人前で緊張することと、コミュニケーション能力がないことも、同じではありません。

私たちは、さまざまな特徴や能力、経験を持った存在です。たった一つの行動や出来事だけで、その人全体を評価することはできません。失敗したことと、失敗した人間であることは違います。

⑩ 個人化(自己関連付け)|何でも自分のせいだと考える

個人化とは、本来は自分だけに責任があるわけではない出来事まで、自分のせいだと考えてしまうことです。

例えば、

  • 職場の雰囲気が悪いのは、自分のせいだと思う
  • 相手が不機嫌だと、自分が何か悪いことをしたと考える
  • チームの成果が出ないのは、自分の努力不足だと感じる

といったものです。

例えば、同僚が朝から不機嫌そうな時、「昨日、自分が何か気に障ることを言ったのだろうか」と不安になる。しかし、相手が不機嫌な理由は、仕事の問題かもしれませんし、プライベートな事情かもしれません。

自分にはまったく関係のない可能性もあります。

また、仕事の成果は、個人の能力だけではなく、チーム体制や業務量、組織の仕組みなど、さまざまな要因に左右されます。

もちろん、自分にも責任がある場合はあります。しかし、自分がコントロールできないことまで、すべて背負う必要はありません。

そんなときは、「この出来事には、ほかにどんな要因があるだろう?」「自分が責任を持つべき範囲はどこまでだろう?」と考えてみてください。

自分の責任と、他人や環境の要因を分けて考えることが大切です。


3. 認知の歪みは人生にどんな影響を与えるのか?

ここまで10種類の認知の歪みを紹介してきました。

読んでみて、自分に当てはまると感じるものはあったでしょうか。

これらの認知の歪みは、単に気分を落ち込ませるだけでなく、自分の行動や人生の選択にも影響することがあります。代表的な4つの影響を見ていきましょう。

① 自分に自信が持てなくなる

成功しても「たまたま運が良かっただけ」と考え、失敗すると「やっぱり自分には能力がない」と落ち込む。

このような捉え方を続けていると、どれだけ成果を出しても、自分の能力を認めにくくなります。

特にマイナス化思考や拡大解釈と過小評価は、自分の良い部分を見えにくくすることがあります。

その結果、実際には多くの経験や強みを持っているにもかかわらず、「自分には何もない」と感じてしまうこともあります。

非常にもったいないと感じます。

② 人間関係で必要以上に傷つく

「返信が遅いから嫌われた」
「相手が不機嫌なのは自分のせいだ」

と考えてしまうと、人間関係で不安を感じる場面が増えてしまいます。

相手の反応を気にしすぎて、自分の意見を伝えられなくなったり、必要以上に気を遣ったりすることもあるでしょう。

もちろん、人間関係の悩みには相手の言動や環境も影響します。ただ、自分の解釈が苦しさを大きくしている場合もあります。

③ 新しいことへの挑戦を避けてしまう

「完璧にできなければ意味がない」
「前に失敗したから、今回も無理だ」
「どうせうまくいかない」

こうした考えが強くなると、挑戦する前から自分の可能性を否定してしまいます。

結果として、失敗する機会だけでなく、成功する機会まで失ってしまうことがあります。

本当は興味があること、やってみたいことがあっても、行動できないまま時間が過ぎてしまう。

認知の歪みは、こうして人生の選択肢を狭めることがあるのです。

④ 自分の本音がわからなくなる

「会社員ならこうあるべき」
「親の期待には応えるべき」
「周囲に迷惑をかけてはいけない」

こうした考え方が強くなると、自分の気持ちよりも、周囲の期待や社会的な基準を優先してしまうことがあります。

その結果、「自分は本当は何がしたいのだろう?」と考えても、答えがわからなくなってしまう。

もちろん、他人を思いやることや、責任を果たすことは大切です。ただ、それと自分の本音を無視することは別です。

自分が大切にしたいことと、他人から求められていることを区別してみる必要があります。

真面目な人ほど自分の気持ちが後回しになる傾向があります。

4. 自分の認知の歪みに気づく3つの方法

では、自分の認知の歪みには、どうすれば気づけるのでしょうか。

難しい心理学の知識がなくても、日常生活の中で取り組める方法を3つ紹介します。

① 強い感情が動いた場面を振り返る

まずは、強い感情が動いた場面を振り返ってみましょう。

例えば、

  • 上司の言葉に強い不安を感じた
  • 同僚の態度に腹が立った
  • 人からの評価を聞いて落ち込んだ
  • 誰かの成功を見て嫉妬した

こうした場面で、自分が何を考えていたのかを振り返ります。

「なぜ、あんなに不安になったのだろう?」
「相手の言葉を、どのように受け取ったのだろう?」

例えば、上司から改善点を指摘されて落ち込んだ場合、「自分は仕事ができないと思われている」と考えていたかもしれません。

その考えに気づくことができれば、ほかの捉え方がないか考える余地が生まれます。

感情は、自分の考え方を知るための手がかりになります。

ただし、強い感情があるからといって、必ず認知が歪んでいるわけではありません。実際に不当な扱いを受けている場合もあります。

まずは感情を否定せず、何を感じ、どう解釈したのかを丁寧に振り返ってみてください。

② 事実と解釈を分けて書き出す

次におすすめしたいのが、事実と解釈を分けて書き出す方法です。

例えば、上司からメールの返信が来ない場面を考えてみましょう。

事実: 上司にメールを送ったが、まだ返信がない。
解釈: 自分が嫌われているのかもしれない。
感情: 不安、焦り。
別の可能性: 忙しくて確認できていない、内容を検討している、返信を忘れている。

このように整理すると、「嫌われている」という考えは、確認された事実ではなく、一つの解釈であることがわかります。

もちろん、実際に相手が不満を持っている可能性もあります。しかし、現時点ではまだわからないことです。

大切なのは、都合の良い解釈を無理に選ぶことではありません。

まだわからないことを、わからないままにしておけることです。

それだけでも、必要以上に不安を膨らませずに済む場合があります。

③ 自分が繰り返し使っている言葉に注目する

日常生活で、自分がよく使っている言葉にも注目してみてください。

例えば、

  • 「いつも失敗する」
  • 「絶対にうまくいかない」
  • 「どうせ自分には無理」
  • 「ちゃんとやるべき」
  • 「自分なんて」

といった言葉です。

こうした言葉を使っているときは、物事を極端に捉えたり、自分を一方的に評価したりしている可能性があります。

例えば、「いつも」「絶対」といった言葉が多く出ると気づいたら、その考えが実際の状況に合っているかどうかを確認してみます。

「本当にいつもそうだろうか?」
「例外は一つもないだろうか?」

と問い直してみてください。

以前、「みんなは、大体2、3人」というxのポストを見たことがありますが、本当にそうだなと感じました。


5. 認知の歪みを見直す4つのステップ

自分の認知の歪みに気づいたら、次はその考えを少し違う角度から見てみましょう。

認知行動療法では、偏った考えを検討し、より現実的で柔軟な捉え方を探す「認知再構成」という方法が用いられています。

ここでは、日常生活でも取り組みやすい4つのステップを紹介します。

STEP1 自分の考えを書き出す

まず、気になった出来事と、そのときに浮かんだ考えを書き出します。

例えば、転職活動で不採用になったとします。

そのとき、「自分には能力がない」「ほかの会社でも採用されないだろう」と考えたとしましょう。

頭の中だけで考えていると、その考えが当たり前のように感じられることがあります。一度言葉にしてみることで、自分が何を考えているのかを客観的に捉えやすくなります。

STEP2 どの認知の歪みに当てはまるか考える

次に、その考えが10種類の認知の歪みのどれに近いか、考えてみます。

先ほどの例なら、

「自分には能力がない」はレッテル貼り、
「ほかの会社でも採用されないだろう」は過度の一般化や先読みの誤りに近いかもしれません。

一つの考えに、複数の認知の歪みが含まれることもあります。

厳密に分類することが目的ではありません。

「自分は一度の結果から、広い範囲の結論を出しているのかもしれない」と気づくことが大切です。

STEP3 その考えを裏づける証拠と、反対の証拠を探す

次に、自分の考えが本当に正しいのか、客観的に考えてみます。

例えば、「自分には能力がない」と考えた場合、
「そう考える根拠は何だろう?」
「反対の証拠はないだろうか?」
と問いかけます。

今回不採用になったことは、事実です。

しかし、過去に仕事で成果を出した経験や、人から評価された経験があるかもしれません。

また、不採用の理由が能力不足だったと決まったわけでもありません。

自分の考えに合う情報だけでなく、合わない情報にも目を向けてみます。

STEP4 より柔軟な捉え方を考える

最後に、これまでの考えに代わる、より現実的な捉え方を考えてみます。

例えば、「自分には能力がない。どこにも採用されない」という考えを、「今回は不採用だった。でも、自分の能力すべてが否定されたわけではない。応募先や伝え方を見直せば、別の結果になる可能性もある」と捉え直してみる。

ここで重要なのは、無理にポジティブな考えに変えようとしないことです。

「自分なら絶対に成功する」と思い込む必要はありません。成功する可能性もあれば、失敗する可能性もある。その両方を認めたうえで、自分がどう行動するかを選べれば十分です。

認知の歪みを見直す目的は、ポジティブになることではなく、物事をより柔軟に、現実的に捉えられるようになることです。


6. 認知の歪みの奥にある「スキーマ」にも目を向けてみよう

ここまで、認知の歪みの種類や見直し方について解説してきました。

ただ、認知の歪みに気づき、その場では考え方を変えられたとしても、同じような悩みを繰り返すことがあります。

その背景には、「スキーマ」と呼ばれる根深い信念が関係しているかもしれません。

例えば、「自分には能力がない」という信念を持っている人がいるとします。

この人は、仕事で失敗すると、「自分は何をやってもダメだ」と考えるかもしれません。一方、仕事で成果を出しても、「たまたま運が良かっただけ」と考えてしまう。

つまり、失敗しても成功しても、最終的に「自分には能力がない」という結論につながってしまうことがあるのです。

このような場合、そのときの考え方だけでなく、根底にある自分への認識を見直すことが役立つ場合があります。

特に、同じような悩みを何度も繰り返しているなら、「自分は、そもそも自分自身をどのように捉えているのだろう?」と考えてみる価値があります。

スキーマがどのように形成され、人生にどんな影響を与えるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。


7. 認知の歪みに関するよくある質問

Q1. 認知の歪みは誰にでもありますか?

はい。誰でも、状況によって物事を偏って解釈することがあります。

特に、強いストレスを感じているときや、不安が大きいときには、否定的な考えに偏る場合があります。

認知の歪みがあること自体は、性格の問題や心の病気を意味するわけではありません。

Q2. 認知の歪みと認知バイアスは何が違いますか?

どちらも認知の偏りに関係する概念ですが、主に使われる文脈が異なります。

認知の歪みは、認知行動療法などで、感情や行動に影響する偏った思考パターンを説明するときによく使われます。

一方、認知バイアスは、心理学や行動経済学などで研究される、判断や情報処理の系統的な偏りを幅広く指します。

両者には重なる部分もありますが、完全に同じ分類ではありません。

Q3. 認知の歪みは性格と関係がありますか?

性格特性や過去の経験、ストレスなどは、物事の解釈の仕方に関係する場合があります。

ただし、認知の歪みをその人の性格そのものと考えるのは適切ではありません。

また、認知の歪みは固定されたものではなく、自分の思考を振り返ることなどを通じて見直していくことができます。

Q4. 認知の歪みは自分で改善できますか?

自分の考えを記録したり、事実と解釈を区別したりすることで、認知の歪みに気づき、より柔軟な考え方を練習することはできます。

ただし、長年繰り返してきた思考パターンは、簡単には変わらない場合もあります。

強い不安や落ち込みが続き、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関や心理専門職に相談することも大切です。

Q5. 認知の歪みが強いと感じたときはどうすればよいですか?

まずは、考え方を無理に変えようとせず、どのような出来事で、どんな考えが浮かぶのかを振り返ってみてください。

特定の考えが繰り返し浮かぶ場合は、その背景にある経験や信念が関係している可能性もあります。

一人で整理するのが難しい場合は、専門家のサポートを受けることも選択肢の一つです。


8. まとめ|自分の考えが、必ずしも事実とは限らない

この記事では、認知の歪みの代表的な10種類と、具体例、自分の思考の癖に気づく方法について解説しました。

改めて、10種類を振り返ってみましょう。

認知の歪み特徴具体例
① 全か無か思考(白黒思考)物事を成功か失敗かの二択で考える「完璧にできなければ意味がない」
② 過度の一般化一度の出来事をすべてに当てはめる「一度失敗したから、次も失敗する」
③ 心のフィルター悪い部分だけに注目する「9人に褒められても、1人の批判が気になる」
④ マイナス化思考良い出来事や成果を否定する「成功したのは、たまたま運が良かっただけ」
⑤ 結論の飛躍根拠が乏しいのに悪い結論を出す「返信がないから、嫌われているに違いない」
⑥ 拡大解釈と過小評価失敗を大きく、成功を小さく捉える「小さなミスは大問題。成果は大したことない」
⑦ 感情的決めつけ自分の感情を事実だと考える「不安だから、きっとうまくいかない」
⑧ すべき思考「こうあるべき」というルールに縛られる「社会人なら、つらくても我慢すべきだ」
⑨ レッテル貼り一部の行動で人間全体を決めつける「ミスをする自分はダメ人間だ」
⑩ 個人化(自己関連付け)自分に責任のないことまで自分のせいにする「相手が不機嫌なのは自分のせいだ」

自分にも当てはまるものはあったでしょうか。

私たちは普段、自分が見ている世界がすべてだと思いがちです。

でも、同じ出来事でも、人によって受け取り方は違います。

「自分にはできない」「きっと嫌われている」「こうあるべき」

そうした考えも、数ある解釈の一つかもしれません。

大切なのは、自分の考えを否定することでも、無理に前向きになることでもありません。

自分が考えていることは、本当に事実なのだろうか。ほかの捉え方はないだろうか。

そう問いかけてみることです。

自分の考え方の癖に気づくことができれば、今までとは違う選択ができるようになるかもしれません。

そして、その小さな選択の積み重ねが、人生を変えるきっかけになることもあります。

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自分の考え方の癖は、長年当たり前になっているからこそ、一人では気づきにくいものです。

私はこれまで350時間以上のコーチングセッションを通じて、自分の思考の癖に気づくことで、気持ちが軽くなったり、新しい行動を始めたりする方々を見てきました。

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この記事を書いた人

キャリアコーチ|Core Career代表

コーチング実績350時間以上、顧客満足度9.1/10。
「このままでは嫌だけど、どう変わればいいかわからない」。そんな方が、長年抱えてきたキャリアのモヤモヤを整理し、自分の本音に気づき、納得して人生を選べるようになる支援を得意としています。

自身も38歳まで「やりたいことがわからない」と悩み続けた経験から、表面的な自己分析や転職ノウハウだけではなく、自分の本音や価値観、その奥にある思考の癖まで深く理解することの大切さを実感し、Core Careerを立ち上げました。

これまで海外営業、7年間の海外駐在、マーケティング、新規事業、経営企画に従事。自身も未経験転職で年収100万円UP、副業で月10万円以上を得るなど、会社員・転職・副業を通じてさまざまなキャリアの選択を経験。

趣味はランニングと読書。2児の父。

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