人を信じてお願いをしよう 【クラウドファンディングが教えてくれるこれからの経済】
お金って何でしょう?
よくお金は信用だと言われます。
お金が信用だとするとお金を払うということは信用の交換ということになります。
では、信用の交換ってどういう事でしょうか?
ここではこれからの新しい「お金」「信用」「人とのつながり」についてのアイディアを紹介します。
こんな方におすすめな記事です
・クラウドファンディングに興味がある方
・お金の本質に興味がある方
・拝金主義が嫌いな方
・これから経済の仕組みが変わると感じている方
・人付き合いが嫌いな方
・アーティストの方
ご紹介するのは
TEDトーク
Amada PalmerさんのThe art of asking(「お願いする」というアート)
です。
Amandaさんはアメリカのミュージシャン。
クラウドファンディングで米ミュージックシーンに物議を醸し出した方です。
体からアートが溢れるような何とも言えないパワーを持っている方です。
下記まとめました。
ストリートパフォーマンス
私は現在音楽で生計を立てていますが、最初から音楽で食べれたわけではありません。
私は大学の教養学部を卒業後、ストリートパフォーマーとして仕事をしていました。
「 生きた彫刻 」
それが私のパフォーマンスです。
手に花を持ち、全身を白く塗り彫刻になりきり静止。目の前にお金を入れてもらう帽子を置きました。
通行人が立ち止まりお金を入れてくれた時に無言で花を差し出し、感謝の意味を込めてその人をじっとみると言うパフォーマンスです。花を受け取っていくないない場合は、悲しそうに見送ります。
このパフォーマンスを続けていく中で様々な出会いがありました。
何日も何週間も誰とも話してないような、孤独を抱えたような人と出会ったことがありました。
その人は花を受け取りじっと私を見返します。
私は無言のまま
「花を受け取ってくれてありがとうと」
と伝えました。
その人も無言で
「誰も私を見てくれなかった、私に気付いてくれてありがとう」
と言ってるようでした。
道の真ん中で互いにに見つめ合い、ちょっとした恋愛感情のようなものが生まれました。
その時、私はその人との間に何とも言えない奇跡のような感覚を体験しました。
もちろん、そんな素敵な出会いばかりではありません。急に車に乗った人がから「働け!」と怒鳴られることもありました。
私はこのパフォーマンスをれっきとした仕事と考えていましたので、驚いたと同時にとても傷つきました。
自分のやっっていることがとても仕事とはいえないものかもしれないと怖くなりました、
そして自分の行為は人にお金を恵んでもらっている恥ずべきものなのかと疑念が生まれました。
ただ後になって振り返ると、実際は私はこのパフォーマンスを通じてどんな高等な教育でも学べない、何よりも大事なことを学んでいました。
因みに収入面の話をすると私はこのパフォーマンスで特に固定のお客さんがいたわけではありませんが、1日に60ドルー90ドルのコンスタントな収入がありました。
当時パフォーマンスとは別に私はバンドを組んでおりピアニストとして活動していました。
そしてそのうちにバンドで食べていけるようになりパフォーマンスもやめてしまいました。
ただ私は彫刻パフォーマンスの時に感じた人と人との直接の交流を失いたくはなかったので、バンドでもライブ後にファンにサインを書いたり話しをしたりと直接的な交流を高めました。
バンド活動とファンとの交流
私たちはファンに対して自分たちを助けて欲しい、自分達の活動に参加して欲しいと伝えることを始めました。これにファンは様々な方法で答えてくれました。
一度は様々なプレイヤーが参加して全くまとまりのない変なライブショーができたりしました。
その後Twitterが世に広まりました。
それで私達はもっと簡単にいろんなことを個人に直接お願いをすることができるようになりました。
例えばピアノ練習がしたい時に誰かピアノ持っていない?とお願いする。そうするとすぐに返事があり。1時間後には近所のお宅にお邪魔しピアノを弾き、その家の方と語らう機会もできました。
私はカウチサーフィン( Couchsurfing : 旅行者などが旅先で誰かの家に無料で止めてもらう制度)も好きで、よく利用しました。
ランダムな人の出会いで生まれる繋がりが大好きなのです。
一度マイアミの貧困層の住宅地でカウチサーフィンをしました。
泊めてけれたのは不法滞在移民の18歳の女の子でした。
彼女の家は貧乏なのに、私が来るとわざわざベッドを開けてくれて、彼女は家族とともにリビングのソファに寝るのです。この人たちは自分で何も持っていないのにそんな人から施しを受けて良いのか私は考えました。これはフェアなのか。。
次の朝彼女の母親は私にトルティアの作り方を教えてくれたり聖書をくれようとしました。
その時「あなたの音楽は娘を救ってくれた。本当にありがとう」と声をかけられました。
それを聞いた時に私は施しを受けるだけでなく、ちゃんと彼女に何かあげることができていた。
これはフェアな交換だと感じました。
クラウドファンディングにも魅力を感じました。
カウチサーフィンもクラウドファンディングも一緒ですですが、大事なのはオーディエンスに飛び込むことです。
身を任せ裸で飛び込むのです。人々は受け入れてくれます。
私はファンの中に入り帽子を持ってよくカンパをお願いしました。活動費を稼ぐためです。
しかしバンドメンバーの1人が観客に行って帽子を差し出しお金をもらう行為をどうしてもできない人がいました。
彼の苦しみはとてもよく理解できました。何か乞食のような気持ちになったり、これはフェアなのかと自問自答したり、「仕事しろ!」と誰かが頭の奥で叫んでいるような気もします。
私たちのバンドは次第に大きくなりメジャーレーベルとも契約をしました。因みにジャンルはパンクなので大衆受けする音楽ではありません。
私たちのデビューアルバムの売り上げは25,000枚。レコード会社からはこれは失敗だと言われました。
私は25,000枚も売れたんだ!凄いじゃない!と思いましたが、レコード会社は様々な数字を駆使し失敗と断言しました。
同じ頃、ライブの後にファンと交流をしていると、あるファンが急に10ドルを差し出して、
「ごめんなさい。私は(正規のCDを買わずに)友達のCDをコピーしました」「どうかこれを受け取ってください」
と言ってきました。
私は驚きましたが、その後も同じようなことが何度も起こりました。
私はそれからライブの後には必ずファンの中に入って帽子を向けてカンパをお願いするようになりました。
そしてこの時に私は自分の音楽を今後全部無料で提供しようと決めました。
そしてお金はお客さんに直接お願いをするというかたちにすることを決めました。
クラウドファンディングでお願いする
私はレーベルをやめ、新しいバンドを始めました。
クラウドファンディングでお金を集めました。
100,000ドルを調達する目標でしたが1,190,000ドルの資金が集まりました。
音楽業界で歴代もっとも多くの資金調達です。
そして、この金額をサポートしてくれた人の人数は25,000人です。
(ファンの数が増えたのではありません。単価が上がったのです)
周りからは
「 音楽業界が不審な時にどうやってお金を出させたんだ!? 」
「 無料なんて音楽業界を破滅させたいのか! 」
「 乞食の真似事か真面目にやれ! 」
と非難や質問が飛び交いました。
私はファンにお金を出させる仕掛けや仕組みを作ったわけではありません。
批判する人は私たちがファンとどんな直接的な交流交換をしているのか知らないから理解できないのです。
彼らは車の中から「働け!」と言った人と同じ。
ストリートに出てこないから理解できない。
私は単純にお願いをしたのです。
誰かに何かをお願いすることで人の繋がりができます。
そしてつながりができれば、人は助けてくれます。
アーティストの中には誰かに何かお願いすることは自分の弱さを露呈すると抵抗感を持つ方もいます。
ただミュージシャンやアーティストはもともとコミュニティーの一部でした。
コミュニティの中で音楽や芸術を通じて人々と繋がったり、つなげたり。
決して手の届かないスターではありませんでした。
現在のミュージシャンやセレブは多くの人から羨望の眼差しで見られる存在、コミュニティーから離れた遠い存在になってしまいました。でもインターネットやSNSで私たちを元の姿に戻すことができるかもしれない。
「人々の直接のやり取りが増え、繋がりができて、自分の繋がっている人との関係性が全て」と言う状況。
インターネット、SNSにはその可能性があります。
でもツールがあるだけではどうにもなりません。
大事なことはちゃんと人々がお互いをみて、信頼して、引け目を感じることなく、素直に「お願い」を発信することです。
私がストリートで彫刻をしたり、クラウドファンディングを成功できたのは人々を信用しているからです。
自分の良い時も悪い時も、音楽もそうでないことも含めて
互いをちゃんと見て、お互いが「お願い」の交換をすれば、人は必ず助けたいと思います。
どうやったら人々に音楽を買わせるか、お金を使わせるかということ必死に考えるのでなく、払いたい人が払えるようにしてあげればいいのです。
動画
Amadaさんは2012年にクラウドファンディングを成功させています。
まだクラファンが広まる前のことですので、彼女の経験と主張はクラウドファンディングやお金や経済、人の繋がりについてヒントを与えてくれます。
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