ここではマインドセット(人が固有にもつ考え方の癖、思考傾向)の強力なパワーについて紹介します。
良くも悪くも、誰でも考え方に癖はあります。
同じ事象でも、人によって捉え方は違います。
「他人と過去は変えられない、変えることができるのは自分と未来だけ」と言われますが、この自分を変えるときに一番強力に作用するのがマインドセットです。
ここではスタンフォード大学の准教授で心理学者の Dr Alia Crum のTEDトーク ” Change your mindset, change the game “ (マインドセットを変えて、ゲームを変える)をご紹介します。
Aliaさんは National Institutes of Health New Innovator Award (医療分野のイノベーター賞)を受賞されたマインドセットの研究者で、TEDで驚きの研究結果を紹介してくれます。
自分を変えたい人、何かにチャレンジしている人、イマイチ上手くいっていない人。
人生を好転させたい全ての人に是非知ってもらいたいお話です。
プラシーボ効果もマインドセットの効果
私は学生の時にイタリアの研究チームが発表した研究に強く感銘を受けました。
研究チームは患者の術後の痛みを抑えるモルヒネの投与を2つの異なる方法で行ないました。
①目の前で医者が注射
②点滴で投与した
結果、モルヒネの量や濃度は全く同じであったにも関わらず①の患者の方が痛みを少なく感じました。
物理的にモルヒネが体内に入った事実は同じであるのに心理的にモルヒネ投与をもっとも認識できる「医師による注射」という体験をしたほうが効果が高かったのです。
研究チームは、その他にもパーキンソン病や高血圧症患者などの処置にもこの研究を応用。
結果、全ての研究で患者が施術を認識し、よくなることを期待した方法の方が飛躍的に効果があったのです。逆に患者が施術を認識できない場合(例えば意識のない寝ている間に薬を投与など)は効果が限定的でした。
この研究結果は所謂プラシーボ効果とよばれるものです。
プラシーボ効果は一般的には「偽薬でも薬だと信じ込ませると何かしらの改善が見られる奇跡的な反応」と思われているかもしれないが、そうではありません。
プラシーボ効果はマインドセットが与える一貫性のある強力で揺るぎのない反応です。
ではここまで結果を左右させるマインドセットとは何でしょう?
「マインドセット」とは私たちが世界を認識理解するために認識を簡潔化するためのレンズ、フレームです。
人は世界の情報を全て受け取ることはできません。全てを受け取りすぎると脳が処理できません。ですので本能的に世界を簡略化して理解しています。ここで作用するのがマインドセットです。
人はその人独自のレンズを通して簡略化しているのです。
そしてこのマインドセットは個々人の健康を考える上で非常に重要な役割を果たします。
あなたの考え方が身体に影響を与えるのです。このことを証明する3つの研究をご紹介します。
研究① 清掃員の運動量
清掃は実はスポーツなどで体を動かすのと同じくらい運動量があります。
ところがあるホテルの清掃員に日々運動をしているかと聞いたところ「全くしていない」と答えが返ってました。彼らは運動と言われた際にランニングや筋トレ、スポーツなどを思い浮かべました。清掃という彼らの仕事が運動になっていることを認識していないのです。
この清掃員を対象に研究をしました。
まず血圧、体脂肪、体重、仕事の満足度を事前に測定、調査し下記の2つのグループに分けました。
①清掃は実は運動量が多く、とても健康的でその上社会貢献度の高い素晴らしい行為だと15分のプレゼンをした組
②なにも説明をしない組
4週間後、測定値を確認したところ、②のグループは数値に何も変化がなかったのに対して①のグループは体重が減り、血圧が下がり、体脂肪も減り、仕事をもっと楽しんで誇りをもってできるという結果がでました。
研究② ミルクシェーク
この研究では2種類のミルクシェークを被験者に飲んでもらい、飲んでいる最中採血しました。そして血中のグレリンを測定しました。
グレリンは胃から生産されるペプチドホルモン、メディカル業界では空腹ホルモンと言われています。お腹が空くとグレリンの数値が上昇し脳に「何か食べろ」とシグナルを出します。
被験者に飲んでもらったミルクシェークは2種類
①カロリー140cal、脂質0、糖質0でライトで軽やかなイラストのついたコップに入れたもの
②カロリー620cal、脂質30g、糖質56gでいかにもカロリーが高そうなイラストの入ったコップに入れたもの
2種類は同じ被験者に1週間を置いて飲ませました。
①を飲んだ際被験者のグレリンが数値が少し下がりました。少しお腹が膨れたという反応。
②を飲んだ際はグレリンは3倍も下がった。もうお腹いっぱいのサインです。
実はこの二つのミルクシェークのカロリー、糖質、脂質量は全く同じ。
通常はグレリンはカロリーの摂取量と相関するのですが、同じカロリーを摂取したにも関わらず数値に3倍もの開きが出たのです。
研究③ ストレス
3つ目の研究は2008年の金融危機の後、金融会社の社員300名を対象に行われました。
従業員は今後10%が解雇となることを認識しており、また日々の長時間労働で大きなストレスを抱えていました。
この従業員を二つのグループに分けてそれぞれ3分間の異なる内容のビデオを見せました。
①ストレスは思考力を奪ったり、パフォーマンスを下げる。出来るだけストレスの発散をすることが大切と説いたビデオ
②ストレスはあなたの力を最大限引き出す道具。最大のパフォーマンスはストレス下でのみ発揮されると説明したビデオ
その後この二つのグループの状態を確認したところ、②の従業員はよく眠れるようになった、腰痛を訴える人が減った、仕事のパフォーマンスが上がった等ポジティブな結果を生みました。
マインドセットで世界は一瞬にして変わる!
今回紹介した研究結果から、マインドセットが引き起こすプロシーボ効果は非常に強力で直接私たちの体に影響を与えていることがわかりました。
何を信じるか、何を期待するかで体は変わるのです。
もちろん実際に運動することや食事に気を付けることは健康につながりますが、それに加え非常に大事なのはどんな考え方、マインドセットでそのことを捉えているかです。
一般的に否定的に解釈されがちなストレスもマインドセットを能動的に変えることでポジティブに捉えられ自分の味方にできるのです。
マインドセットについてはすでに様々な研究がされています。
・Carol Dweck’s research
知性や才能について、生まれ持った固定したものと考えるのでなく変化と成長ができるものとマインドセットを変えればもっと成長できると主張
・Yale Becca Levy’s research
歳を取ることについて、歳をとることを不可避な衰えと捉えるのでなく、もっと知恵をつけること成長することとポジティブに捉えると寿命が伸びると主張
・Ted Kaptchuk Harvard’s program
プロシーボ効果を要とした医療行為を継続的に研究
私たちが認識している全ての根源はマインドセットです。マインドセットなしでは生きれません。
そしてこのマインドセットには上限がありません。無限の可能性を秘めています。
まずこれを認知することが大切です。
私達はマインドセットを変えることで一瞬にして世界を変えることができるのです。
所感
いかがだったでしょうか?
私は若干保守的なので物事をやる際に最悪のケースを考える傾向があったり、すぐに何かを関連付けたくなる癖があります。その他にも自分が気づいていない癖がたくさんあるように思います。
もう少し危険なことに目を向け恐れるのでなくリスクをとって大きなビジョンを見れるよう思考を変えていこうと思いました。関連づけも楽しいのですが、その事象をありのままに受け止めることも大事かなとも感じました。
今後も自分のマインドセットを定期的に見直して少しでも楽しく生きることができればなと思います。
是非実際のTEDの動画を見てみてください。とても聴きやすく論理だったプレゼンです。
押し付けがましさもなくとても好感がもてます。
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