・何かしたいけど、やる気がおきない
・やる気がでても、すぐにやる気がなくなってしまって続かない
・部下やこどものモチベーションをあげたい
ここでは、こういった「やる気」についての悩みを解決するTEDトークを紹介します。
今回ご紹介するのはアメリカのベスセラー作家ダニエルピンクさんのThe Puzzle of Motivation 「 やる気に関する驚きの科学 」。ダニエルピンクさんはクリントン政権下ではゴア副大統領のスピーチライターを務めたとしても有名な方です。
モチベーションをあげてパフォーマンスを最大化する手段を科学的な研究結果をもとに導き出した信頼性の高い内容で、著作「モチベーション3.0」は世界的なベストセラーになっています。
一時的でない本質的なやる気、モチベーションをあげる方法を知ることができる
モチベーションの維持が難しい方、部下を持つマネージャー、自分のパフォーマンスをあげたい方は是非チェックしてみてください!
報酬とモチベーション
今日私は私たちのビジネスに対する考え方について考え直したいと思います。
まずこちらの絵を見てください。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、
1945年に心理学者Karl Dunckerによって作られたCandle Problem(ロウソク問題)です。
「絵を見て、壁にロウソクを固定し火を灯してロウソクの蝋がテーブルに落ちない方法を考えてください」という問題です。
パッと感がつくのは、画鋲で固定する。
もう少し考えるとロウソクの側面をあぶって壁に蝋で固定する。
など答えが出てきそうですが、どちらも違います。
通常5〜10分もするとほとんどの人が正解にたどり着けます。
正解は
「画鋲が入っていた箱にキャンドルを乗せて、箱を壁に画鋲で固定する」です。
とろそく、マッチ、画鋲は道具としてすぐ目に入りますが、
画鋲の箱は画鋲を入れているものして初め認識され使える道具と考えられない。
正解するには、この箱を道具として使うというマインドシフトが必要です。
この問題を、2つの被験者グループに出しました。
2つのグループにはあらかじめ別のことを伝えています。
①出来るだけ早く解いてください。
研究の為みんなの解答速度を測ってグループの平均値を取りたいのです。
②出来るだけ早く解いてください。
トップ25%に入れば$5、一番早ければ$20あげますと報酬を用意した。
どちらが早く回答すると思いますか?報酬がある②はモチベーションがあがりそうですよね。
しかし結果は①の方が早く正解しました。
②は①より解答にたどり着くまで3分半も長くかかったのです。
おかしいと思いませんか?
私たちは成果を出す為にはボーナス、インセンティブが必要と考えています。
だから企業の人事は給与やボーナス制度に磨きをかけてきました。
でも実際は逆になった。
報酬で人のパフォーマンスは上がらなかったのです。
実はこれは唯一の研究結果ではありません。
過去40年に渡り同じような研究が行われ、全く同じ結果が出ているのです。
多くの場合、報酬によって成果は出ません。むしろ成績がさらに悪くなることもあります。
これは科学的な結果です。確固とした事実です。
ただこの事実は今まで無視されてきました。
科学が証明していることと、ビジネスで実際に行われていることは全く逆なのです。
アメとムチの使いどころ
ただし同じキャンドル問題でも、最初の絵がこうなると結果は変わってきます。
この問題は最初の問題より簡単です。
すでに箱が箱をして描かれているので箱を問題解決の道具だとすぐ理解できるのです。
考え方をシフトする必要はありません。
この場合ですと、報酬を約束されたグループが圧倒的に早く正解にたどり着きました。
やることが明確でシンプル、狭い視野で目的に向かって突き進むそんなタスクに報酬は有効的なのです。
しかしクリエイティブなタスクでは報酬はうまく働きません。
ただ今後ホワイトカラーワーカーに求められるのは決まり切ったルーティンタスク、プログラミングなど左脳的な作業 アウトソース、オートメーションが可能な作業にできるではありません。
私たちに求められるのは、もっと右脳的でクリエイティブな活動です。
ルールのない世界で様々な問題に直面し、それらを解決する手段を各人がそれぞれのやり方で解決をしていくのです。
創造性はインセンティブでは発揮されません。これは科学が証明した事実、真実です。
経済学者のDan Ariely はMIT生徒を対象にある実験をしました。
実験では大中小3つのレベルの報酬を用意。異なる種類のタスクを与え報酬がある場合とない場合でパフォーマンスを比較しました。
結果、機械的にできるタスクに対しては報酬は効果的でした。
しかし認知能力が求められるようなタスクでは報酬が大きければ大きいほどパフォーマンスは低下しました。
私たちはインドでも同じ事件を試しました。アメリカに比べると所得の低いおそらく報酬にももっと敏感な人々です。
どうなったか。結果は同じです。
認知能力の必要なタスクではインセンティブが高いとパフォーマンスは落ちます。
これらはアメリカの一流大学の研究です。MIT, Carnegi Mellon, University of Chicago、そしてFederal Reserver Bank of US がスポンサーしています。アメリカが国を挙げて研究した結果なのです。
イギリスのLondon School of Economicsも金銭的インセンティブはパフォーマンスに悪影響を与えると発表しています。
多くの組織が科学的根拠のない、古い考えや思い込みに囚われているのです。
これ以上同じ過ちを犯さないようにしなくてはなりません。
脅迫や報酬でパフォーマンスは上がりません。
本質的なモチベーションをあげるには
人のパフォーマンスは内在する本質的なモチベーションによってのみ向上します。
自分にとって価値のある課題、自分が興味のあること、大きな重要な課題の一角を担っている感覚がモチベーションにつながります。
そしてこの本質的なモチベーションを生み出すキーワードが3つあります。
Autonomy
自主性:自分の人生を自分で切り開くという思い
Mastery
成長:自分にとって大切なスキルを磨きたい、上達したいという思い
Purpose
目的:自分より大きい何かの為にやりたいという思い
ここではAutonomy自主性についてだけお話しします。
企業でのマネージメントは自然の産物ではなく、人が作った価値です。マネージメントは人に服従を求めるならば素晴らしい考えです、しかし人に参加を求めるならば自主性の方がうまく機能します。
例えばAtlassian はオーストラリアのソフトウェアの会社をご存知でしょうか?
この会社にはFedex Dayという日が設けられています。
この日は24時間は何をしてもいいのです。通常業務と全く異なることをして、一日の最後に発表をするのです。名前がFedexというのは一日の最後に何か提案を届けないといけない方です。
Googleも同じように業務時間の20%を何をしてもいい時間としています。
彼らのGmailなどの商品の半分はこの20%の時間から生まれます。
(現在はもうやっていません)
もっと極端に主体性を推し進めたROWEという経営戦略もあります。
ROWE: Result Only Work Environment
日本語で 「完全結果志向の職場環境」 と呼ばれます。
ROWEでは人々には スケジュールがありません。どこでいつどのように働いても構いません。仕事をちゃんと行い結果を出せば何も言われません。ミーティングも強制力はなく参加したければします。 結果多くの場合、生産性は上がり、社員の満足度も上がり、離職率が下がりました。
そんな話しをするとそれは現実的ではないという方もいるかもしれません。
本当にそうでしょうか?
果たして現実的でないのはどちらでしょうか?
1990年代半ば MicrosoftはEncartaという百科事典を作り始めました。
適切なインセンティブを設定、何千というプロにお金を払って宣伝してもらいました。高い報酬をもらったマネージャが 全体を監督し予算と納期の中で出来上がるようにしました。
何年か後に別の百科事典が開発されました。Microsoftとは全く異なるモデルです。
報酬は0、楽しみのためにみんなが好きだからやるというモデルです。
Wikipediaです。
当時の経済学者に聞けば全員Microsoftのビジネスモデルが勝つと言ったでしょう。
これは2つのアプローチの モチベーションに纏わる大きな対決だったのです。
内的な動機付け vs 外的な動機付け
自主性・成長・目的 vs アメとムチ
結果は内的な動機付け、「自主性・成長・目的」のKO勝ちです。
まとめ
1、20世紀的なインセンティブは狭い範囲の限られた条件下でのみ働く
2、対価を用意すると時に創造性を損ないます
3、ハイパフォーマンスは飴と鞭によってもたらされるのでなく、
- 自分の内から出てくるやりたいという気持ち、
– 自分自身の為にやるという意欲、
– 重要な何か大きなものへの貢献です。
これは科学が証明したことです。
この事実を実際の行動に落とし込めば、危険でイデオロギー的な飴と鞭を脱却すれば
私たちは多くのロウソク問題を解き、世界を変えることができるかもしれない
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